金融機関というと、まず銀行が思い浮かびます。銀行は預金を集め、それを企業や個人に貸し出します。しかし、金融の世界には、預金を受け入れなくても大きな金融機能を果たしている組織が数多く存在します。
その代表が保険会社とノンバンクです。
保険会社は「万一のときに保険金を払ってくれる会社」と考えられがちですが、それだけではありません。大量の保険料を長期間にわたって集め、その資金を国債や株式、貸出などで運用するため、巨大な長期資金の供給者でもあります。
一方、ノンバンクは、銀行のように預金を受け入れることなく、消費者金融、クレジットカード、リース、不動産金融、住宅金融、ベンチャーキャピタルなど、さまざまな形で信用を供給します。
つまり金融システムは、
「預金を集めて貸す銀行」だけでできているのではない。
保険、年金、証券、リース、クレジットなど、異なる仕組みを持つ金融機関が、それぞれ異なる方法で「お金・時間・リスク」を仲介することで成り立っています。
- 1.保険会社は「金融機関」でもある
- 2.生命保険は「長期のお金」をつくる仕組み
- 3.生命保険会社のお金はどこへ行くのか
- 4.生命保険と年金――「長生き」そのものが金融問題になる
- 5.生命保険会社も「運用」に失敗する
- 6.生命保険会社の資産運用が変化した
- 7.損害保険は生命保険とは違う
- 8.ノンバンクとは何か――「銀行ではない金融機関」
- 9.ノンバンクには実にいろいろな種類がある
- 10.クレジットカードは「信用を先に使う」仕組み
- 11.リースは「買わずに使う」ための金融
- 12.ベンチャーキャピタルは「未来」にお金を出す
- 13.ノンバンクはなぜ急成長したのか
- 14.しかしノンバンクはバブル経済の「影」も背負った
- 15.保険会社とノンバンクに共通するもの
- 16.金融機関の姿は社会そのものを映している
- 17.金融機関の「境界」は次第に曖昧になっていく
- 18.金融機関を見るときは「何を集め、何を供給しているか」を見る
- 「銀行だけが金融機関」という見方を捨てると、金融の世界が見えてくる
1.保険会社は「金融機関」でもある
保険会社の第一の仕事は、もちろん保険です。
生命保険なら、加入者から保険料を集め、死亡や疾病など契約で定められた事由が発生したときに保険金を支払います。損害保険なら、火災、自動車事故などの損害に対して保険金を支払います。
ところが、保険会社には銀行とは異なる重要な特徴があります。
それは、
保険料を受け取ってから保険金を支払うまでに、かなりの時間差がある
ということです。
たとえば30歳の人が生命保険に加入し、毎年保険料を支払ったとします。その保険金が実際に支払われるのは、数十年後になる可能性があります。
この「保険料を先に受け取り、保険金を後から支払う」という時間差によって、保険会社には大量の資金が蓄積されます。
だから保険会社は、その資金をただ金庫に眠らせておくわけにはいきません。
将来の保険金支払いに備えながら、国債、株式、貸出などに運用します。
このため保険会社には、
保険機能
と
金融機能
の二つの側面があります。資料でも、保険会社は保険機能だけでなく金融機能を持つため、広義の金融機関として扱われています。
2.生命保険は「長期のお金」をつくる仕組み
生命保険の金融機能を理解するうえで重要なのが、長期性です。
銀行預金の場合、預金者は明日にもお金を引き出すかもしれません。そのため銀行は、預金者の引き出しに対応できるよう、ある程度の流動性を確保する必要があります。
これに対して生命保険では、契約期間が非常に長くなる場合があります。
つまり、
多数の人から少しずつ長期間にわたって資金を集め、それを長期的な資産運用に回す
という仕組みを作ることができます。
これは経済全体にとって非常に重要です。
企業が工場を建設する。インフラを整備する。国や企業が長期の債券を発行する。
こうした長期的な経済活動には、長期間運用できる資金が必要です。
生命保険会社は、そのような長期資金の供給者として大きな役割を果たしてきました。
資料では、平成12年末の生命保険会社の運用資産は175兆3,269億円とされており、当時の日本の金融システムにおいて非常に大きな資金運用主体であったことが分かります。
3.生命保険会社のお金はどこへ行くのか
生命保険会社が集めた資金は、そのまま保険金として眠っているわけではありません。
大きくいえば、
保険料
↓
責任準備金などとして蓄積
↓
貸出・債券・株式などに投資
↓
運用収益を確保
↓
将来の保険金・配当などの支払いに備える
という循環になります。
ここで登場するのが責任準備金です。
保険会社は将来の保険金などの支払いに備えて資金を留保します。その一部を運用しながら、将来の支払い能力を維持していきます。
この仕組みを考えると、保険会社は単なる「事故の後始末をする会社」ではないことが分かります。
むしろ、
現在の家計のお金を、将来の保障と現在の企業・政府などの資金需要へ結びつける金融機関
と考えることができます。
4.生命保険と年金――「長生き」そのものが金融問題になる
生命保険の中でも特に興味深いのが年金保険です。
年金保険は、長期間にわたって保険料を積み立て、将来、一定の年齢に達した後に年金として受け取る仕組みです。
これは一見すると「老後のための貯蓄」に見えます。
しかし金融の観点から見ると、非常に重要な機能があります。
それは、
現在の所得を未来の所得へ移す
という機能です。
30代で働いて得た所得の一部を将来に移し、60代、70代以降の生活資金にする。
つまり年金保険は、
「時間をまたいで所得を移転する金融商品」
でもあります。
しかも高齢化社会になると、この機能の重要性はさらに高まります。
資料でも、社会の高齢化に伴って年金保険の伸びが注目されていることが述べられています。
これは現在の日本社会を考えるうえでも非常に重要な視点です。
高齢社会では、「高齢者が多い」という人口問題だけでなく、
現役時代に形成した資産を、長い老後へどう配分するか
という金融問題が同時に発生します。
5.生命保険会社も「運用」に失敗する
ここで保険会社の金融機関としての側面が、非常に重要になってきます。
保険会社は将来の保険金支払いを約束しています。
たとえば契約者に対して一定の利回りを前提とした予定利率を設定していたとします。
ところが、保険会社の資産運用利回りがそれを下回ったらどうなるでしょうか。
約束した運用条件と実際の運用収益との間に差が生じます。
これがいわゆる逆ざやです。
資料では、1990年代以降の運用環境の悪化によって逆ざやが発生し、生命保険会社の経営問題が深刻化したことが説明されています。さらに、平成9年の日産生命、平成10年の東邦生命など、中堅生命保険会社の経営破綻にも触れています。
ここには、銀行とは違った保険会社のリスクがあります。
銀行の場合、
預金金利 < 貸出金利
という形で利ざやを確保することが基本です。
一方、生命保険会社は、
契約者に約束した条件 < 実際の資産運用収益
を維持する必要があります。
ところが市場金利が低下すると、これが難しくなります。
つまり保険会社は、
「長期間にわたって約束した金融条件を守りながら、巨大な資産を運用する」
という難しい仕事をしているのです。
6.生命保険会社の資産運用が変化した
生命保険会社の資金運用には、時代による変化もありました。
資料によると、戦前には長期貸出と有価証券投資がほぼ半々でした。
戦後になると企業の設備投資が活発になり、生命保険会社による貸出が増加します。昭和40年代末には貸出が有価証券投資の3倍を超える状況もありました。
ところが昭和50年代に入ると企業の設備資金需要が弱まり、貸出の伸びが低下します。そして昭和61年には貸出と有価証券投資の比重が逆転し、平成12年末には有価証券投資が貸出の約2倍になっていました。
これは非常に面白い変化です。
金融機関の姿は、金融機関自身の意思だけで変わるわけではありません。
企業がどれだけ資金を必要としているのか
金利がどう動いているのか
株式や債券の市場がどうなっているのか
によって、金融機関の資産構成そのものが変化します。
金融機関は経済の外側に存在するのではなく、産業構造や企業行動を映し出す鏡でもあるのです。
7.損害保険は生命保険とは違う
生命保険と損害保険は同じ「保険」ですが、金融機能にはかなり違いがあります。
生命保険は長期契約が中心で、保険料を長期間積み立てながら将来の保険金支払いに備えます。
一方、損害保険では、通常は1年程度の契約が中心となります。
火災、自動車事故など、年間に発生する可能性のある損害に備えて保険料を集め、その期間の保険金支払いに対応します。
したがって、生命保険会社と比較すると、損害保険会社の資金運用には異なる特徴があります。
資料では、平成12年末の損害保険会社の運用資産は27兆1,710億円で、生命保険会社のおよそ6分の1とされ、金融機関としての規模も相対的に小さいとされています。また、資金の運用は主として有価証券投資に向けられていました。
損害保険の中心も時代によって変化しています。
従来は火災保険や海上保険が中心でしたが、その後は自動車保険の比重が高まったことも説明されています。
つまり保険会社の商品構成を見るだけでも、社会の変化を見ることができます。
自動車が普及すれば自動車保険が伸びる。
住宅が増えれば火災保険の重要性が高まる。
高齢化すれば生命保険や年金保険の役割が変わる。
保険は社会のリスク構造を映す金融商品なのです。
8.ノンバンクとは何か――「銀行ではない金融機関」
次に登場するのがノンバンクです。
ノンバンクという名前は、
non-bank
つまり「銀行ではない」という意味です。
では何が銀行と違うのでしょうか。
最も基本的な違いは、
一般から預金を受け入れない
ことです。
銀行は預金を集め、それを貸し出します。
一方、ノンバンクは基本的に預金を集めず、借入金や社債などで資金を調達し、それを消費者や企業などへの信用供与に使います。
資料では、ノンバンクを、不特定多数に対してさまざまな与信業務を行う広義の金融業者として説明しています。
9.ノンバンクには実にいろいろな種類がある
「ノンバンク」という言葉から、一つの業種を想像すると分かりにくくなります。
実際には非常に多様です。
資料では、代表的な業態として、
消費者金融会社
クレジットカード会社
信販会社
不動産金融会社
住宅金融専門会社
リース会社
ベンチャーキャピタル
などが挙げられています。銀行系のノンバンクも多数存在していたことが示されています。
つまりノンバンクとは、一つの金融商品を扱う業界ではありません。
むしろ、
銀行の預金・貸出という伝統的な仕組みから外側に広がった、さまざまな信用供与ビジネスの集合体
と考えたほうが分かりやすいでしょう。
10.クレジットカードは「信用を先に使う」仕組み
ノンバンクの代表例として、クレジットカードを考えてみましょう。
現金を持っていなくても商品を購入できる。
これは単なる「支払い方法」ではありません。
実際には、
商品・サービスを今受け取る
↓
代金の支払いは後にする
という信用取引です。
つまりクレジットカードは、
現在の購買力を将来の所得から前借りする仕組み
と見ることもできます。
このように考えると、金融とは銀行の窓口だけに存在するものではないことが分かります。
私たちが日常的に使うカードにも金融機能が組み込まれています。
11.リースは「買わずに使う」ための金融
ノンバンクの中でも特に面白いのがリース会社です。
リースとは、簡単にいえば、リース会社が設備などを購入し、それを利用者に一定期間貸し出す仕組みです。利用者は一括して設備を購入するのではなく、一定のリース料を支払って使用します。
たとえば企業が高価な機械を導入するとします。
通常なら、
企業が機械を購入する
↓
購入代金を一括または借入で支払う
という方法があります。
しかしリースなら、
リース会社が機械を購入する
↓
企業はその機械を使う
↓
企業がリース料を支払う
という仕組みを取れます。
これは企業にとって、設備投資に必要な資金負担のあり方を変える方法になります。
つまりリースは単なる「レンタル」とは違い、設備を利用するための金融的な仕組みとして機能します。
12.ベンチャーキャピタルは「未来」にお金を出す
もう一つ興味深いのがベンチャーキャピタルです。
資料では、ベンチャー・ビジネス育成のために出資・貸付を行う専門金融会社が挙げられています。
一般的な銀行融資では、過去の業績、担保、キャッシュフローなどが重要になります。
しかし創業したばかりの企業には、そもそも十分な実績がありません。
そこでベンチャーキャピタルは、
「今いくら儲かっているか」
だけではなく、
「これからどれだけ成長する可能性があるか」
を見て資金を提供します。
これは金融の中でもかなり特殊な仕事です。
金融機関は本来、不確実性を評価して資金を配分する存在ですが、ベンチャーキャピタルは特に大きな不確実性を引き受けます。
成功する企業は一部でも、その成功が非常に大きければ投資全体として成立する可能性があります。
したがってベンチャーキャピタルは、未来の産業を金融によって育てる仕組みともいえます。
13.ノンバンクはなぜ急成長したのか
資料では、ノンバンクが急速に成長し、平成12年3月末時点で約3万社、資金量は約84兆円に達していたとされています。
なぜ銀行だけではなく、このような金融業者が必要になったのでしょうか。
一つには、社会の資金需要が多様化したことがあります。
「企業に1億円貸す」という銀行融資だけでは、現代社会のさまざまな信用需要には対応できません。
消費者の分割払い。
クレジットカード。
自動車や機械のリース。
住宅ローン。
不動産金融。
ベンチャー企業への投資。
こうした異なるニーズに合わせて、金融機能が専門化していきます。
つまり金融は、
「一つの銀行が全部やる」
方向から、
「目的ごとに専門的な金融サービスを提供する」
方向へ広がっていったのです。
14.しかしノンバンクはバブル経済の「影」も背負った
ノンバンクの成長は、日本経済の金融自由化や資金需要の多様化と結びついていました。
しかし、その一方で、バブル経済期には不動産金融との関係が深まりました。
資料では、ノンバンクの中でも特に住宅金融専門会社などの問題が、土地投機、不動産向け過剰融資、不良資産の発生と絡んでいたことが示されています。
ここには金融の重要な教訓があります。
金融機関は、資金を必要とするところへ資金を供給します。
しかし、
資金需要が強いこと
と
その資金需要に応じることが望ましいこと
は同じではありません。
土地価格が上昇しているから土地を担保にさらに融資する。
土地価格が上昇する。
担保価値がさらに上がる。
さらに融資できる。
こうした循環が続くと、金融が資産価格上昇を増幅させることがあります。
そして資産価格が下落すると、今度は逆方向の循環が起こります。
担保価値が下がる。
融資の回収が難しくなる。
不良資産が増える。
金融機関の経営が悪化する。
この意味で、金融機関は経済成長を支えるだけでなく、場合によっては資産価格の上昇と下落を増幅する存在にもなり得ます。
15.保険会社とノンバンクに共通するもの
一見すると、保険会社とノンバンクには共通点がないように見えます。
生命保険会社は死亡や老後に備える。
損害保険会社は事故や災害に備える。
クレジット会社は買い物を支える。
リース会社は設備利用を支える。
ベンチャーキャピタルは新企業を支える。
しかし、金融という視点から見ると共通点があります。
それは、
「将来の不確実性を現在の経済活動につなぐ」
ということです。
生命保険なら、
現在の保険料 → 将来の保障
です。
年金保険なら、
現役時代の資金 → 老後の所得
です。
クレジットなら、
将来の返済能力 → 現在の購買力
です。
リースなら、
将来の事業収益 → 現在の設備利用
です。
ベンチャーキャピタルなら、
将来の企業価値 → 現在の事業資金
です。
こうして見ると、金融とは単に「お金を移動させること」ではありません。
時間を越えて価値を移動させる仕組みなのです。
16.金融機関の姿は社会そのものを映している
保険会社の歴史を見ると、高齢化や自動車社会などの社会変化が見えてきます。
ノンバンクを見ると、消費社会、住宅取得、設備投資、ベンチャー企業、不動産市場などの変化が見えてきます。
そして銀行を見ると、企業の設備投資や運転資金需要、家計の住宅需要などが見えてきます。
つまり金融機関は単なる「お金の会社」ではありません。
社会が何を必要としているのかを映し出す鏡でもあります。
たとえば高齢化が進めば、生命保険だけでなく、年金、介護、医療、資産管理などの金融需要も変化します。
企業の設備投資が減れば、銀行の貸出需要も変化し、生命保険会社などの機関投資家が資金を運用する先も変わります。
新産業が生まれれば、ベンチャーキャピタルの役割が重要になります。
自動車社会が発達すれば、自動車保険や自動車ローン、リースなどが発展します。
金融の構造を追うことは、実は社会の構造変化を追うことでもあります。
17.金融機関の「境界」は次第に曖昧になっていく
さらに重要なのが、金融自由化です。
かつては銀行、証券会社、保険会社などの間に比較的明確な業務分野の区分がありました。
しかし金融自由化が進むにつれて、その境界は徐々に緩和されていきました。
資料では、平成8年の新保険業法によって、子会社方式による生命保険会社と損害保険会社の相互参入が可能になったことなどが説明されています。また、保険料率の自由化も進められていました。
銀行と証券の関係についても、従来の分離制度が徐々に緩和されていました。
こうして金融業界は、
銀行
証券
保険
ノンバンク
という完全に独立した世界から、相互に接近する世界へ変化していきます。
これは利用者にとって金融サービスの選択肢が広がる一方、金融機関の経営が複雑化し、どこでどのようなリスクを取っているのかを把握することも難しくなることを意味します。
18.金融機関を見るときは「何を集め、何を供給しているか」を見る
ここまでの金融機関を一つの視点から整理すると、とても分かりやすくなります。
| 金融機関 | 主な資金源・仕組み | 主な金融機能 |
|---|---|---|
| 銀行 | 預金など | 企業・個人への貸出、決済 |
| 証券会社 | 市場・顧客資金 | 証券売買、企業の資金調達 |
| 生命保険会社 | 保険料 | 長期資金の運用、保障 |
| 損害保険会社 | 保険料 | リスク移転、資金運用 |
| ノンバンク | 借入・市場調達など | 消費者信用、リース、不動産金融など |
| ベンチャーキャピタル | 投資資金など | 新企業へのリスクマネー供給 |
| 短資会社 | 金融機関間の資金 | 短期金融市場の仲介・取引 |
この表から分かるのは、金融機関にはそれぞれ異なる時間軸とリスクを扱う役割があるということです。
銀行は比較的幅広い資金需要に対応します。
生命保険会社は非常に長い時間軸の資金を扱います。
損害保険会社は事故や災害というリスクを扱います。
ノンバンクは特定の信用需要に専門化します。
ベンチャーキャピタルは極めて不確実性の高い成長企業に資金を供給します。
短資会社は金融機関同士の短期的な資金需給を調整します。
こうした役割分担によって、金融システム全体が成立しています。
「銀行だけが金融機関」という見方を捨てると、金融の世界が見えてくる
保険会社やノンバンクを見ていると、金融というものの本質がかなり鮮明になります。
金融とは、単に「余ったお金を貸す」ことではありません。
時間を調整する。
リスクを分散する。
将来の所得を現在の購買力に変える。
現在の所得を将来の生活資金に変える。
企業の未来の収益を現在の投資資金に変える。
事故や災害による損失を、多数の人で分担する。
こうしたさまざまな機能を一つひとつ専門化したものが、現代の金融機関です。
特に保険会社は、「リスクを引き受ける機関」であると同時に「長期資金を運用する機関」です。ノンバンクは、「銀行では対応しにくい信用需要を専門的に取り扱う機関」として発展してきました。
そして、ここに金融の面白さがあります。
金融機関は社会の外からお金を配っているのではありません。
人々の人生、企業の投資、住宅購入、老後、事故、災害、新産業、不動産市場など、社会のさまざまな活動に「お金の時間軸」を組み込んでいるのです。
だから金融機関の変化を追えば、その時代の社会が何を必要とし、何を恐れ、何に投資し、どのような未来を期待していたのかまで見えてきます。
保険会社とノンバンクを理解することは、金融業界の一部を覚えることにとどまりません。「金融とは、社会の未来に対して現在の資源をどう配分する仕組みなのか」という問いを考える入口にもなります。
