金融機関は、預金を集め、企業や個人に貸し出し、有価証券を運用し、為替や証券などのサービスを提供することで収益を得ています。しかし、金融機関の経営は、一般企業とは少し違った難しさを持っています。
その理由は、金融機関が「他人のお金を大量に預かり、そのお金を別のところへ運用する」事業だからです。
たとえば銀行が100億円の預金を集め、その大部分を企業への長期融資に回したとします。企業への融資が順調なら利息収入を得られます。しかし、その途中で預金者が一斉に「お金を返してほしい」と要求したらどうでしょうか。貸し出した100億円は、明日すぐに回収できるとは限りません。
ここに金融機関特有の経営問題があります。
収益を上げるためには資金を運用しなければならない。
しかし、安全性を確保するには、いつでも現金化できる資産も持っていなければならない。
さらに、貸した相手が倒産すれば貸出金が回収できなくなり、金利が変化すれば運用収益と調達コストの関係が崩れ、為替が変動すれば外国通貨建て資産に損失が生じることもあります。
金融機関経営とは、突き詰めれば、「収益性を追求しながら、同時にさまざまなリスクを管理する仕事」なのです。
金融機関にとって「儲かること」だけが重要ではない
金融機関の経営を考えるとき、最初に出てくるのが収益性です。
金融機関は事業として存在している以上、利益を上げなければなりません。
銀行の場合、その基本的な収益源は、預金などによって資金を調達し、それを貸出や有価証券投資などによって運用することから生じます。
たとえば、
預金金利が1%
貸出金利が3%
なら、単純化すれば2%の差が生まれます。
この差が利ざやです。
より厳密には、資金運用によって得られる利回りと、資金を調達するために必要となるコストとの差が利ざやになります。資料では、貸出やコールローン、有価証券などの運用利回りと、預金・債券・借用金・コールマネーなどの調達コストとの関係から利ざやを説明しています。
銀行はこの利ざやを積み重ねることで収益を得ます。
しかし、銀行の収益源は利ざやだけではありません。
有価証券を売買することによる利益、外国為替取引による利益、各種手数料などもあります。資料でも、金融機関の収益には大きく、資金運用と資金調達の金利差によるものと、有価証券・外国為替の売買や各種手数料によるものがあると整理されています。
ここで重要なのは、金融機関にとって「利益が多ければそれでよい」というわけではないことです。
むしろ金融機関の場合、利益を追求しすぎること自体が危険になることがあります。
収益性と安全性は、ときに対立する
銀行が安全性を高めようと思えば、現金やすぐに売却できる国債などを大量に保有すればよいでしょう。
しかし、それでは収益性が低くなります。
現金を金庫に置いていても、通常は大きな利息を生みません。
一方、企業に長期融資をすれば、利息収入を得られます。しかし、そのお金は簡単には現金化できません。
つまり、
安全性を高めようとすると収益性が低下しやすい。
収益性を高めようとするとリスクが増えやすい。
という関係があります。
これは銀行経営の根本的なジレンマです。
たとえば、100億円の資金があるとしましょう。
そのすべてを現金で持っていれば、預金者からの払い戻しには対応しやすいでしょう。しかし、ほとんど収益を生みません。
逆に、100億円をすべて長期融資に回せば、利息収入を大きくできます。しかし、預金者から突然「100億円返してほしい」と言われても、すぐには対応できません。
したがって銀行は、
「どれだけ稼ぐか」
だけではなく、
「いつでもどれだけ現金化できるか」
を同時に考えなければなりません。
① 流動性リスク――「明日、お金を返せますか?」
金融機関にとって最も重要なリスクの一つが流動性リスクです。
流動性とは、簡単にいえば「必要なときに、すぐお金に換えられる性質」です。
現金なら流動性は極めて高い。
銀行預金も基本的にはすぐに使えます。
市場で取引されている国債なども、比較的容易に売却して現金化できます。
しかし、企業への長期融資はそうはいきません。
「100億円貸しているので、明日返してください」
と企業に言っても、企業側がその資金を設備投資に使っていたら、すぐには返せません。
つまり銀行の資産には、
すぐ現金化できるもの
と
簡単には現金化できないもの
があります。
資料では、金融機関が短期の資金を調達して長期に運用する性格を持っていることを指摘し、この関係が行き過ぎると預金の払い戻しに支障が生じる危険性を説明しています。これが流動性リスクです。
支払準備という「銀行の財布」
そこで銀行には、支払準備が必要になります。
支払準備とは、預金者から払い戻しを求められたときに備えて保有しておく、流動性の高い資産です。
最も分かりやすいのは現金です。
また、日本銀行への預け金なども重要な支払準備になります。
しかし、現金は基本的に利息を生みません。
そのため銀行としては、
「全部を現金で持っておく」
というわけにもいきません。
そこで、現金化しやすく、しかも一定の収益を生む資産を保有することになります。
市場性のある有価証券や、短期金融市場で運用する資産などがその例です。資料でも、コールローンや買入手形など、流動性を重視した資産が支払準備として位置づけられています。
この仕組みを考えると、銀行のバランスシートがなぜ複雑なのかが分かります。
銀行は単純に「預金を全部貸している」のではありません。
現金、短期資産、有価証券、貸出金などを組み合わせて、収益性と流動性のバランスを取っているのです。
② 信用リスク――「貸したお金が返ってこない」
銀行にとってもう一つ非常に重要なのが信用リスクです。
これは簡単に言えば、
「貸したお金が返ってこないリスク」
です。
企業に10億円を貸したとしましょう。
契約上は、
「10億円を返してもらえる」
ことになっています。
しかし、借り手の企業が倒産したらどうでしょうか。
元本の一部、場合によっては大部分が回収できなくなります。
銀行にとっては、それまで「資産」だった10億円が、実際には価値を失ってしまうことになります。
このような債務者の信用状態の悪化によって発生するリスクが信用リスクです。
銀行が「貸したい」と思いすぎるのも危険
信用リスクの面白いところは、銀行にとって「貸出を増やすこと」が必ずしも良いことではない点です。
景気が悪くなり、企業からの借入需要が低下すると、銀行は「貸したいのに、借りたい企業が少ない」という状況に陥ります。
すると、銀行同士の貸出競争が激しくなります。
「うちなら貸します」
「金利をもっと下げます」
「多少条件が悪くても融資します」
という競争が起こる可能性があります。
さらに、利益を増やそうとして、経営状態があまり良くない企業に対して高い金利で貸そうとする誘因も生じます。
資料では、金融が停滞して適切な貸出先を見つけにくくなると、金融機関が積極的に貸出を行うようになり、その結果として不動産関係融資などが不良化した例を挙げています。
これは銀行経営の非常に重要な逆説です。
「貸せば貸すほど儲かる」と考えて貸出を増やしていると、将来、その貸出が不良債権になる可能性がある。
目の前の利益を追求することが、将来の損失につながることがあるのです。
バブル期の銀行融資が教えること
この問題を考えるうえで、日本のバブル経済は非常に分かりやすい事例です。
土地や株式の価格が上昇していると、
「土地を担保にすれば安全だ」
「この企業の資産価値は上がっている」
と考えやすくなります。
そこで銀行が積極的に融資を拡大すると、企業や不動産会社はさらに土地を購入し、土地価格が上昇するという循環が生まれます。
ところが、資産価格が下落すると状況が逆転します。
担保価値が下がる。
企業の財務状況が悪化する。
融資の返済が難しくなる。
銀行の不良債権が増える。
銀行の収益力が低下する。
銀行が新規融資を抑える。
企業の資金調達が難しくなる。
経済活動が弱くなる。
このように、金融機関の信用リスクは、金融機関だけの問題ではありません。
銀行の貸出の質が悪化すると、それが経済全体に波及する可能性があるのです。
③ 金利リスク――金利が動くと銀行の利益も変わる
金融機関にとって、もう一つ重要なのが金利リスクです。
これは金利の変動によって、金融機関の収益が悪化するリスクです。
例えば銀行が、
「低い金利で預金を集めて、高い金利で長期融資をする」
というビジネスを行っていたとします。
この状態で市場金利が上昇するとどうなるでしょうか。
預金金利も上昇していけば、銀行が預金者に支払うコストが増えます。
ところが、以前に低い固定金利で貸し出していた長期融資の金利は簡単には上がりません。
すると、
受け取る金利は低いままなのに、支払う金利だけが上昇する
という事態が起こります。
最悪の場合、
貸出金利 < 預金金利
となり、金利差が逆転してしまうことさえあります。
資料でも、金利自由化によって預金金利が短期金融市場の金利に応じて変動しやすくなり、低金利時に集めた資金を長期貸出に回していた場合、金利上昇時に金融機関が損失を被る可能性が説明されています。
金利が自由になるほど、銀行経営は難しくなる
一見すると、「金利を自由にできること」は金融機関にとって良いことのように思えます。
しかし自由化には別の側面があります。
規制によって預金金利が固定的に低く抑えられていた時代なら、銀行は資金調達コストをある程度予測できます。
しかし市場金利が自由に動くようになると、
「来年の預金金利はいくらになるのか」
「市場金利が急上昇したらどうなるか」
を考えなければなりません。
つまり金融自由化は、金融機関に自由を与えると同時に、自分でリスクを管理する責任も増やしたのです。
これは現代の金融機関経営を理解するうえで重要なポイントです。
④ 価格変動リスク――持っている証券の値段が下がる
銀行が国債や株式などの有価証券を保有していると、そこにもリスクがあります。
それが価格変動リスクです。
たとえば銀行が100億円分の国債を保有していたとします。
市場金利が上昇すると、一般に既に発行されている固定金利債券の市場価格は下落します。
すると、銀行が保有している国債の価値も低下する可能性があります。
株式なら、さらに分かりやすいでしょう。
100億円分の株式を保有していて、株価が20%下落すれば、単純計算では20億円分の価値が減少します。
もちろん、売却しなければ実現損失にならない場合もありますが、金融機関の財務状態に影響を与える重要な問題です。
資料でも、債券価格は市場金利の変動によって変化し、国債などのディーリングによって利益が生じる場合もあれば損失が生じる場合もあること、保有株式にも価格変動リスクがあることが説明されています。
金利リスクと価格変動リスクは似ているようで違う
ここは少し細かいのですが、非常に重要です。
金利リスクは、金利が変動することで金融機関の収益構造などに影響が出るリスクです。
価格変動リスクは、保有している債券や株式などの市場価格が変化することで生じるリスクです。
両者は密接に関係しています。
特に債券の場合、
市場金利が上昇する → 既存債券の価格が下落する
という関係があるため、金利変動が証券価格を通じて金融機関の財務状態に影響します。
つまり金融機関は、
「いくらの金利でお金を調達したか」
だけではなく、
「そのお金でどのような金融資産を持っているか」
まで考えなければなりません。
⑤ 為替リスク――円とドルの関係だけでも損益が変わる
外国為替を扱う金融機関には、さらに為替リスクがあります。
例えば銀行が1億ドル相当の外国資産を保有していたとします。
1ドル=150円なら、
1億ドル=150億円
です。
ところが円高になって1ドル=130円になると、
1億ドル=130億円
となります。
ドルの金額そのものは変わっていなくても、円換算した価値は20億円減少します。
これが為替変動によるリスクです。
資料でも、外国為替を取り扱う金融機関が為替相場の変動によって損失を被る可能性を為替リスクとして説明しています。
為替リスクは、国際化した金融機関ほど重要になります。
銀行が海外の企業に融資する。
外国債券を保有する。
外国通貨で資金を調達する。
海外の金融機関と取引する。
こうした活動が増えるほど、為替相場の変化が金融機関の収益に影響するようになります。
さらに怖いのが「システミック・リスク」
金融機関のリスクには、もう一つ非常に重要な特徴があります。
それは、一つの金融機関の問題が、他の金融機関に波及する可能性があることです。
通常の企業なら、一社が倒産しても、その影響は取引先などに限定されることがあります。
しかし金融機関は、互いに資金を貸し借りしています。
A銀行がB銀行に資金を貸している。
B銀行がC銀行に資金を貸している。
C銀行が企業に融資している。
このような複雑なネットワークが形成されています。
もしA銀行が破綻し、B銀行が資金を回収できなくなれば、B銀行の経営も悪化します。
そのB銀行がC銀行への支払いをできなくなれば、C銀行にも影響が及びます。
こうして問題が連鎖すると、金融システム全体の機能が麻痺する可能性があります。
資料では、流動性リスクや信用リスクが金融機関の破綻などから取り付けを引き起こし、それが他の金融機関に連鎖して金融システム全体の機能を麻痺させるおそれをシステミック・リスクとしています。
これは金融機関が一般企業と決定的に違うところです。
金融機関は「自分だけが安全ならよい」というわけではありません。
他の金融機関とのつながりが非常に強いため、一つの金融機関の問題が社会全体の問題になる可能性があります。
金融機関の五つのリスク
ここまでを整理すると、金融機関が直面する代表的なリスクは次のようになります。
| リスク | 何が起こるのか | 典型的な問題 |
|---|---|---|
| 流動性リスク | 必要なときに資金を用意できない | 預金の大量引き出し |
| 信用リスク | 貸した資金が回収できない | 企業倒産・不良債権 |
| 金利リスク | 金利変動で収益構造が悪化する | 調達金利の上昇 |
| 価格変動リスク | 保有証券の市場価格が下落する | 国債・株式価格の下落 |
| 為替リスク | 為替相場によって損失が生じる | 円高による外貨資産価値の低下 |
そして、これらが複数の金融機関に連鎖していくと、システミック・リスクにつながる可能性があります。
そこで登場する「ALM」
では、これほど多くのリスクを金融機関はどのように管理するのでしょうか。
重要な考え方がALM(Asset Liability Management=資産・負債管理)です。
名前は難しそうですが、基本的な発想は非常にシンプルです。
資産と負債をバラバラに考えない。
これがALMの基本です。
銀行には、
負債
預金、借入金、債券など
と、
資産
貸出金、有価証券、現金など
があります。
たとえば、
「短期で返さなければならない預金を大量に集めて、長期融資ばかりしていないか」
「金利が上昇したとき、預金金利の上昇に対して貸出金利はどうなるか」
「円建てで調達した資金を外貨建て資産に運用していないか」
「市場金利が変化したとき、保有債券の価値はどう変わるか」
といった問題を、資産と負債の両方から管理します。
資料でも、ALMを資金の運用・調達の期間対応や、国内外の金利変動、為替相場の変動などへの対応を中心としたリスク管理手法として説明しています。
ALMを「銀行の家計簿」と考えると分かりやすい
ALMを身近な例に置き換えてみましょう。
ある人が、
「来月100万円を返さなければならない借金がある」
にもかかわらず、
「手元のお金はほとんどなく、100万円は10年後に満期になる定期的な資産にしている」
としたら、かなり危険です。
資産そのものの価値が100万円以上あったとしても、必要な時期に現金化できないからです。
逆に、
「資金は十分にあるが、ほとんど現金で持っている」
なら安全性は高い一方、資産運用としての収益性は低くなります。
銀行の場合、この問題が何兆円、何十兆円という規模で発生します。
だからこそ、
資産の金額だけを見るのではなく、資産と負債の「金額」「期間」「金利」「通貨」などの組み合わせを見る
必要があります。
これがALMという考え方の核心です。
最後に重要になるのが「自己資本」
リスク管理を行っても、すべての損失をゼロにすることはできません。
企業が倒産することもあります。
株価が下落することもあります。
金利が急上昇することもあります。
為替が大きく動くこともあります。
そこで重要になるのが自己資本です。
銀行が損失を被ったとき、それを吸収するための「クッション」の役割を果たします。
たとえば100億円の自己資本を持つ銀行が10億円の損失を出しても、まだ90億円の自己資本が残ります。
しかし自己資本が薄ければ、比較的小さな損失でも経営の安全性を大きく損ないます。
資料でも、金融機関の信用リスクなどに備えるため、収益力を高めて内部留保を厚くし、適正な自己資本比率を確保することが重要な課題とされています。また、自己資本比率規制については、後の章で扱う構成になっています。
つまり金融機関にとって利益は、
株主に配当するためだけのものではありません。
利益を積み上げて自己資本を厚くすることによって、将来発生する可能性のある損失への耐久力を高めるという意味もあります。
「高収益の銀行」と「安全な銀行」は必ずしも同じではない
ここまで考えると、金融機関経営の難しさがかなり明確になります。
たとえば、非常に高い利回りの融資先ばかりに資金を貸せば、短期的には大きな利益を得られるかもしれません。
しかし、その融資先が経営危機に陥れば、大量の不良債権が発生します。
反対に、非常に安全な資産ばかりを保有すれば、大きな損失は避けやすくなりますが、収益性が低下します。
さらに、現金を大量に持っていれば流動性は高まりますが、その現金自体は大きな収益を生みません。
つまり金融機関経営には、
収益性
安全性
流動性
という複数の目標があります。
この三つを同時に最大化することは簡単ではありません。
だからこそ金融機関経営は、単純な「利益最大化ゲーム」ではなく、リスクとリターンを組み合わせながら、長期的に経営を維持するゲームになります。
金融機関の「安全」は、社会全体の安全でもある
金融機関のリスク管理が重要なのは、銀行の株主や経営者を守るためだけではありません。
銀行には企業や個人の預金があります。
企業には銀行からの融資があります。
政府には国債市場があります。
金融機関同士には資金取引があります。
決済システムも金融機関を通じて動いています。
したがって金融機関が大きく機能不全に陥れば、
預金者 → 銀行 → 企業 → 従業員 → 消費 → 他の企業
という経済の循環そのものに影響する可能性があります。
だから金融機関には、一般企業以上に「安全性」が求められます。
資料でも、金融機関の経営が安全でないと見なされれば預金の急激な引き出しが起こり、破綻に追い込まれるおそれがあることを指摘しています。
金融機関にとっての信用とは、単なる企業イメージではありません。
「この銀行なら、必要なときにお金を返してくれる」
という社会的な信頼そのものです。
金融機関経営の核心は「未来を管理すること」
金融機関の仕事をここまで掘り下げてみると、非常に興味深い姿が見えてきます。
銀行は今日の利益だけを見て経営することができません。
今日貸した企業が、5年後に返済できるのか。
今日集めた預金が、明日大量に引き出されないか。
今日購入した国債の価格が、金利上昇によってどう変化するのか。
今日の為替レートが、明日どれだけ動くのか。
今日の金融機関の破綻が、他の金融機関に影響しないか。
つまり金融機関経営とは、将来の不確実性を相手にする仕事なのです。
金融機関が「信用」を扱うというのも、ここに理由があります。
信用とは、突き詰めれば、
「今はまだ起きていない未来を、ある程度信じて資金を動かすこと」
です。
企業に融資することも、国債を買うことも、年金資産を運用することも、基本的には未来に対する判断です。
だから金融機関には、収益を上げる能力だけでなく、未来に起こり得る損失を想像し、それに備える能力が必要になります。
金融機関の収益とリスクを一つの図式で考える
金融機関の経営を非常に単純化すると、次のような構造になります。
預金・借入などで資金を調達する
↓
貸出・有価証券・外国為替などで運用する
↓
利ざや・売買益・手数料などを得る
↓
利益を内部に蓄積して自己資本を厚くする
↓
同時に、流動性・信用・金利・価格・為替などのリスクを管理する
↓
金融機関の安全性を維持する
この循環が崩れると、金融機関経営は不安定になります。
したがって、金融機関の経営を理解するときには、
「どれだけ利益を上げたか」
だけを見るのでは不十分です。
むしろ、
「どのような資金を調達し、どのような資産に運用し、どのようなリスクを負い、そのリスクを吸収できるだけの自己資本と流動性を持っているか」
を見る必要があります。
これが金融機関の経営を理解するための基本的な視点になります。
そしてこの視点に立つと、金融機関の「収益」と「リスク」は別々の問題ではないことが分かります。
利益を得るためにはリスクを取らなければならない。
しかし、リスクを取りすぎれば金融機関そのものが危うくなる。
だから、どこまでリスクを取るのかを管理しなければならない。
金融機関経営の本質は、まさにこの微妙な均衡の上に成り立っているのです。
